ニイハオ!今日は嘉義の郊外にある故宮博物院南部院区を見学した後、鉄道で高雄へ向かいます。
国立故宮博物院南部院区は、台北にある国立故宮博物院の分館として2015年に開館しました。約70ヘクタールの広大な敷地を有し、建築家・姚仁喜氏によって設計された建物は、中国書法の筆致をイメージした曲線的なデザインが特徴です。
館内には、アジア全域の陶磁器やテキスタイル、仏教美術などの貴重なコレクションが展示されています。特に、アジアの茶文化や織物の歴史に焦点を当てた常設展示があり、本院とは異なる視点でアジア文化を俯瞰することができます。建物自体も環境に配慮されたグリーン建築として設計されており、周辺の人工池や景観と調和しています。なお、台北の本院に収蔵されている貴重な文物が定期的に貸し出される特別展も随時開催されています。
もともと北京の紫禁城にあった故宮の宝物は、1930年代の日本軍の侵攻や、その後の中国国内の内戦(国共内戦)による戦火から守るため、中国大陸各地を転々と移動させて避難させていました。最終的に、内戦で共産党に敗れそうになった蒋介石率いる国民党政府が、数ある文化財の中から特に価値の高い「超一級品」を厳選して台湾へと運び出したものが台湾の故宮博物院に展示されています。
中国本土から持ち出せなかった宝物については北京や南京で保管されていたのですが……ブログ記載時の25年12月時点で、南京博物院に収蔵されている宝物のうち数千点が元館長によって組織的に盗難・販売されていた疑惑が持ち上がり大スキャンダルになっています。
また、北京の故宮についても文化大革命時に紅衛兵に包囲され、あわや破壊される寸前までいきました(当時 共産党No2の周恩来が故宮を封鎖して守った)。
もともと国民党政府には「故宮の宝物(中国伝統文化の象徴)を持っている自分たちこそが、正当な中国の国家である」という正当性を示す政治的な意図もあったと言われているそうですが……中国がここまで文化財保存能力がないとは思ってなかっただろうな。
路線バスで故宮博物院南部院区へ
故宮博物院は嘉義西側の郊外にあり、嘉義駅から路線バス(BRT, Bus Rapid Transit)が一時間に一本ほど出ています。
朝8時ごろ、ホテルを出発して嘉義駅「後駅(西口)」にあるバスターミナルへと向かいます。ここは長距離バスと一部の路線バスのターミナルみたいな感じのよう。

目当ての7212番はこのターミナルの一角から発車します。建物内を探して発車プラットフォームを見つけました。

バスを待っていると係員の人がどこに行くのか話しかけてきて、「故宮までなら無料だよ」と教えてくれました。乗車するときに乗車証がわりに謎のプラスチックカードをもらい、下車するときに回収される仕組みです。
帰りのバスも故宮から乗るなら無料で乗れます。

バスは優先路線をのんびり走り、8:40ごろに博物館前へ着きました。
故宮博物院南部院区
バスを降りて建物の方へ向かいます。
台北の分館なのでもっと小さいかと思っていましたが巨大な建物で驚きました。さらにもう一棟別の建物も建設中なので、今後はさらに広くなるよう。敷地内には大きな池やアート作品も点在しています。

開館は9時からなのでまだちょっと余裕があります。入口でチケット(150台湾ドル、約740円)とオーディオガイド(150台湾ドル)をもらってしばらく待ちます。
受付には日本語が通じる人もいました。

館内はいくつかのテーマに分かれた展示がされています。
特に興味をひかれた仏教系のやつと乾隆帝にまつわる展示からいくつか。
北斉の菩薩頭像
北斉時代(550-577年・6世紀中葉)の石灰岩で作られた高さ37cmほどの頭像です。 この時代の特徴は顔の造形で、前の時代である北魏の仏像が角張ってシャープな印象だったのに対し、北斉に入るとお餅のようにふっくらとした丸顔へと変化します。 表情は「沈思(ちんし)」と呼ばれる、深く考え事をしているような、あるいは瞑想に入っているような静けさを湛えています。

供養曼荼羅
チベット仏教の儀式で用いられる「立体的なマンダラ」です。お皿の上には、仏教的宇宙観の中心である聖なる山「須弥山(しゅみせん)」をはじめ、太陽、月、大陸などが表現されています。当時の清の皇帝はチベット仏教を非常に大事にしており、これも故宮の皇后の部屋に保管されていたものだそう。
素材は紅銅に金をメッキした「紅銅鎏金(こうどうりゅうきん)」で、裏から叩いて模様を浮き上がらせる「錘牒(すいちょう)」という高度な技法らしい。

藏文《龍藏經》內護經板之綠地經簾
清の康熙帝が、祖母である太皇太后の長寿と健康を祈って作らせたチベット語の大蔵経です。 使用された金は約190kg(5,000両)にも及び、数多くの宝石と100人以上の熟練職人を動員した国家プロジェクト級の宝物です。
展示されているのはお経を保護する「経簾(カーテン)」と「経板」。五色のシルクや刺繍には魔除けの意味があり、経板の側面にはチベットの神々が緻密に描かれています。
故宮でもトップクラスの宝物で、収蔵されているもののなかで鑑定額をつけたらこれが一番値段が高いとも言われるらしい。

仿古石鼓九件
清の乾隆帝が作らせた石鼓のレプリカ(仿古)。「石鼓」とは、戦国時代の秦で作られた中国最古の石刻文字が刻まれた石碑のことで、風化していくオリジナルの石鼓を憂い、新品で残すためにこのミニチュアを作らせたとか。
今でいう模型やフィギュアみたいなものだと思うのですがコレクター魂を感じます。

信天主人玉璽
乾隆帝が、自身の信念や功績を記念して作らせた玉璽(皇帝の印鑑)です。信天主人には「天を信じ、天命に従う主人」という意味があり、1758年にひどい干ばつを祈祷で解決した際や、西方の平定に成功した際など、自らの統治の節目に好んで使用されました。
最高級の玉に、皇帝専用のデザインである龍が絡み合う「交龍紐(こうりゅうじゅう)」が施されており、単なる印鑑を超えた、皇帝の自信とプライドを象徴する宝物です。
信天主人という称号は自分でつけたらしく、最強の俺TUEEEアイテムって感じでしょうか。

特急列車で高雄へ
帰りも無料のバスで嘉義駅へ帰ってきました。

今日はこれから高雄へ向かいます。帰り道に鉄道をウェブ予約しようとしたら決済で弾かれたので、嘉義駅の鉄道窓口で購入、341台湾ドル(約1,670円)。
待合スペースは狭いけど冷房効いてます。
乗車するのは14:39発の自強121号。「自強号(じきょうごう)」は日本でいう特急や急行のような列車です。これは比較的古い車両のようで見た目は普通列車っぽい。

一時間ちょっとで高雄に到着しました。

駅からホテルへは2km弱離れているため、タクシーで向かいます。台湾ではUberが使えるため簡単。
ホテルは「好地方ホテル六号館」で一泊約7,000円。何の不満もない個室って感じです。

夕食は近所のレビューが良い食堂「城里的小月光」で一人鍋。久しぶりに台湾料理か、と思ったら中華料理を西洋・日本風にアレンジして一人飯に対応したブランドだそう。
中国本土だと一人用鍋って見かけないのでうれしい。メインと小鉢、飲み物やらがついた一人用のセットで419台湾ドル(約2,050円)。
写真は安永鱸魚湯という生姜、わかめスズキの切り身が入ったスープに香鬆飯というふりかけご飯。

明日から車を借りて台北へ向かいます。
