数千の石碑を抱く碑林博物館へ(2025/7/29)

中国

今日は蘭州から西安に移動し、碑林博物館を観光します。

高速鉄道で西安へ

9時ごろにホテルをチェックアウトし蘭州西駅へ。

構内はめちゃ広くて改札まで歩くのが大変です。

西安への列車は9:48発で約3時間、運賃は一等で約6,600円です。先日、パオトウから移動したときに通ってきたルートを戻る形です。

列車は何事もなく12:40ごろに西安北駅へ到着。駅から直結している地下鉄でホテルの最寄り駅まで向かいます。

最寄りの地下鉄駅からホテルまでは5百メートルほど。距離はそれほどでもないものの荷物を持っていると暑くてきつい。

予約したのは「イーロンエタンホテル」で一泊約4,500円。チェックイン時間には少し早いですが部屋に入れてもらえました。

窓がありますが外の景色は見えず、屋内スペースの照明から彩光するだけの窓風の何かです。まあ部屋自体は十分綺麗ですし、観光地のど真ん中でこの金額なら全然いい。

碑林博物館へ

西安碑林博物館は、中国陝西省西安市南門の内側に位置し、北宋の1087年(元祐2年)に設立された中国最古の碑刻博物館です。

起源は唐代の孔子廟に始まり、唐の太宗が儒学を重んじて経典を石に刻ませたことに由来します。その後、北宋時代に学者たちが保存のために「開成石経」などをこの地に集め、碑林として整備されました。以後、明・清の時代を通じて碑の数は増え、書法や歴史を学ぶ場として発展しました。現在では4000点以上の石碑や墓誌が収蔵されており、漢代の隷書から唐の楷書、宋以降の書風まで、中国書道の流れを一望することができます。

代表的な展示としては、後漢の「曹全碑」、唐代の「玄奘三蔵法師碑」、秦の「峄山刻石」などがあり、いずれもその時代の政治や文化を伝える重要な史料です。こうして碑林博物館は、書法芸術と歴史研究を結びつけた、中国文化史上特異な存在となっています。

ホテルから博物館へは3kmほどあるためタクシーで移動します(約8.5元、約170円)。

博物館への入場料は85元(約1,700円)。入口の保安検査でミニ三脚が引っ掛かりロッカー預けになりました。

博物館の性質上ガイドがあったほうがいいだろうと音声ガイドを借りようとしましたが、中国語しかなかったため諦めました。以前は英語版もあり、今は建物の改築にあわせて新しいものを準備中だそうです。

敷地内は大きく博物館と碑文保管スペース的な建物の二つに分かれています。

碑文保管スペースは7つの部屋があり、各部屋には石碑がびっしり展示されています。北宋時代に114点の石碑から始まり、現在も保管数は増えているらしい。

それにしても石碑を丸ごと持ってきて保管するってすごいこと考えるな。そのおかげで逸失から免れたものも多いのでしょう。

室内をざっと歩いて博物館へ。

博物館のメインフロアには、小部屋ごとにひとつずつ重要な石碑が展示されています。

孔子廟堂之碑

唐代に孔子廟を改築した後、その完成を記念して建てられたものです。  原本ではなく北宋時代の再刻(複製)。

広智三蔵和尚碑

唐代の781年に建てられ、興善寺の三蔵にまつわる事績、彼の密教を唐代に伝える活動、経典の翻訳・宣言事業などを刻んだもの。宋代に碑林へ移された。

曹全碑

東漢時代の185年に建てられ、曹全の家系、功績、事蹟などを記録しており、中には当時の黄巾の乱に曹家が応じた事績など、東漢末期の重要な史料が含まれている。漢代の隷書碑刻のなかでも字跡の鮮明さと保存状態の良さで高く評価されている。明の万暦年間に陝西省で出土し、その後碑林に移された。

曹全は現在の陝西省合陽の地方官で善政で知られているそう。曹操とは同時代だが地域も離れており直接の関係はないらしい(系譜上の同族とする説もある)。

峄山刻石

秦始皇帝が東巡の際に峄山に刻したと伝えられるもので、刻文は秦の丞相 李斯によるとされている。

現存するのは原本ではなく、北宋の993年に模写した拓本を用いて刻した再刻本。碑文の内容は、秦始皇の峄山巡行とその徳を賛える文であるとされ、刻文の書体・表現は、後世における篆書や隷書への変遷を考察するうえでも貴重な手がかりとなる。

これは泰安の岱廟でみた泰山刻石と同じく始皇七刻石の一つ。

原本ではなく再刻(複製)のものも多いですが、複製されたのが1000年くらい前だったりするので十分古い。再刻にしてもこうして多くが現存しているのは、当時から重要なものは再刻しておくって慣習があったためなんでしょう。

石に刻んでおけば数百年以上はもちそうな気がしますが、当時からさらにその先のことを考えて再刻してたっていうのはなんかすごいな。1000年くらい前の時点で既に失われてしまった石碑がたくさんあって問題になっていたのかもしれません。

博物館の地下にはインスタレーション的なものや、石碑の歴史や分類を整理した展示スペースもあります。このフロアもかなり広くて見応えがあります。

博物館の一部や別の建物には石碑以外の石像なども収蔵。

見学後は街を散歩しながら帰りました。

西安名物ビャンビャン麺

夕食には近くの食堂でビャンビャン麺(𰻞𰻞麺)。

ビャンビャン麺の歴史は唐代までさかのぼり、いまでは西安のソウルフード。 街を歩くといたるところにビャンビャン麺の看板を掲げた食堂があります。

そんな食堂にだいたいあるのが「氷峰(冰峰)」という西安のご当地オレンジソーダ。かつて地方都市でコーラやスプライトの流通が乏しかった時代に、各地域の飲料メーカーがオリジナルの清涼飲料を作るというトレンドがあったよう。

ビャンビャン麺は見た目の通り辛いけど美味しい。かかっているのは泼辣子(ポーラーズ)という唐辛子に熱い油をかけて香味を引き立てたもの。氷峰は濃厚で甘くビャンビャン麺とよく合いますが、辛さに対して一瓶だとちょっと量が足りません。

この食堂は前払い式だったのですが、Alipayの海外クレジットカードが弾かれて使えませんでした。こんな時に限ってホテルに財布を置いてきているという……。

仕方がないので一度ホテルに戻ろうとすると、お店の人が「先に食べていきなよ」と言ってくれたのでお言葉に甘えて注文。ありがとう……。

店員さんには言葉通じなかったので翻訳アプリでコミュニケーションしていたのですが、「なぜあなたは先に食べて行かないのか?」とWhy not〜の直訳みたいな表示でちょっと面白かった。

ビャンビャン麺18元と氷峰3元で計21元(420元)。食後にホテルへ財布を取りに戻ったあと現金で支払いました。

明日は陝西省歴史博物館を見学します。