泰山で7,000段の石段を登る (2025/6/9)

中国

ニイハオ! 今日は泰山を徒歩で登ってきます。

中国山東省の泰山は、古代より「東岳」と呼ばれ、五岳の筆頭として尊ばれてきた聖山です。

紀元前から皇帝たちが「封禅」の儀式を行い、天に統治の正当性を示す場とされました。秦の始皇帝や漢の武帝もこの山に登り、儀式を執り行った記録が残ります。山全体に摩崖石刻や石碑が点在し、歴代の文人や政治家の足跡をたどることができます。

登山道は南天門を目指す石段が有名で、途中には碧霞祠や中天門などの見どころが連なります。自然と信仰、歴史が一体となった泰山は、単なる山ではなく、中国文明の縮図ともいえる存在です。

泰山へ

泰山へは麓からバスとロープウェイを乗り継いで簡単に山頂へ行くこともできるのですが、せっかくなので徒歩で登ってみたいと思います。

登るにはいくつかルートがありますが、一番有名なのは紅門というところから登るルート。これは岱廟から始まり、紅門-中天門-南天門を経て山頂の玉皇頂へ至る約9km 石段7,000段の道になります。 

ガイドブックを見るとコースタイムが4時間半くらいなので、先日韓国で登った慶州南山の2倍くらいの長さです。

昨日までは「慶州南山ですらきつかったので無理じゃないか」とちょっと弱気になっていました。ですが、岱廟で秦の石刻をみて「これは自力で登らないとダメだ!」とモチベーションが上がったので全ルート徒歩でチャレンジしてみます。

今夜のホテルは山頂に予約しているので、どうにかして山頂までは行く必要があります。途中からはロープウェイもあるので、どうしても無理ならエスケープすればいいでしょう。

紅門-中天門

泰安のホテルには明後日にまた戻ってくるので、大きい荷物は置いていきます。ホテルから登山口である紅門まではタクシーで移動。配車アプリで呼んだ運転手さんは昔日本の某電気メーカーで働いてたらしく、軽く会話をしつつ向かいます。

麓のロータリーみたいなところで降ろしてもらいます。そのまま登ろうかと思ったのですが、目の前にマクドナルドがあったので吸い込まれるように入店。朝食を済ませます。

ロータリーのすぐ前にある旅客中心(観光センター)で入場チケットを購入。3日間有効で115元(2,300円)。学生料金(57元)もあったのですが、外国学生が適用になるかが現場の係員で判断できず「何百メートルか先のオフィスに行って聞け」と言われ、面倒だったので普通料金のチケットを買いました。

8:30に入場。脇には露店が連なり、水や杖を買うことができます。杖はものによりますが2~5元(約40〜100円)で買えるようです。これまでの物価感から20元くらい取られるかと思ったら意外と安いです。下山してきた人から回収してリサイクルしているので、原価がほぼかかってないせいかもしれません。

しばらくは林道で、なだらかな石畳の登りとたまに階段という感じです。ずっと石段での登りが続くかと思っていたので少し安心。この時点で下山してくる人とも結構すれ違います。昨日 山頂泊の人たちかなあ。

後半の石段に備えて、足に疲労をなるべく溜めないようにゆっくり力を入れずに登ります。最初のほうは疲労よりも暑さのほうがきつい。道の脇にはちょくちょく露店もあるので休憩や補給には困りません。

進むにつれて石段の比率が上がってきて、壺天閣というところで再度チケットチェック。この辺りから階段が険しくなってきた感じがします。

驚いたのは道のわきにかなり狭い間隔でごみ箱があることです。定期的に清掃員の方が回収して、景観美化に力を入れているようです。まあその清掃員の人、ごみ箱の中にあった回収対象じゃないごみ?をその辺に投げ捨ててましたけど。

ちょっと足に疲れがたまってきたかなーというところで、おおよその中間地点である中天門に到着。時刻は10:10ごろで、麓からは1時間40分ほどかかりました。

中天門は麓からのバスと山頂へのロープウェイの乗り継ぎ地点になっており、露店や観光客で賑わっています。今度はケンタッキーに吸い込まれそうになりますが我慢です。

ここから目的地の南天門が見えるのですが、遠すぎ&高すぎて軽く絶望しました。行けるんか?

中天門-南天門

中天門の売店で冷たい飲み物を買って汗がひくまで少し長めに休憩し、10:50ごろに再度出発。少しのなだらかな登りの後は階段が中心になります。

斬雲剣という岩がありました。名前もですが、この岩に文字を刻んじゃうセンスは中二病の先駆けだよなあ。英語名のCloud Cutting Swordにはもうちょっと中二感がほしいところです。

これ以外にも、ルート上には文字が刻まれた岩(摩崖石刻)が数多くあります。これ、観光地の落書きとは違って個人の思い付きで彫れるものではないのでどうしてたのかなあと思ったのですが、調べると内容選定-承認-下書き-彫るみたいなプロセスはあったらしい。まあ皇帝とか高官が彫りたい!って言ったら拒否はできないでしょうけど。書体でおおまかな時代がわかったり、内容は経文や詩からとったりと、学がある人ならこれを見るだけで楽しめそうです。

少し歩いたあと露店でアイスを食べながら休んでいると、重そうな荷物を持った人夫さんが登っていきます。背中に背負うスタイルではなく、両端に荷物を下げた棒を肩で担いでいます。これは片方の肩に重さがかかって相当きつい気がしますけど、石段でのバランスはこっちのほうが取りやすいのかな。

後半の山場である十八盤へは11:40ごろに到着。ここから南天門まで、標高差400m 1,600段くらいの石段が連続します。十八盤という名前は秦の始皇帝がここを登った時に十八回休憩したことから来ているらしい。

この辺に来ると足に乳酸が溜まってきて、50段も登ると足が動かなくなってきます。ただ、すぐ上にはもう南天門がちらちら見えており、一歩ずつでも登れば着けるという希望があるので精神的にはそこまで辛くないです。

一度に登れる段数も30段、20段と少なくなっていきますが、残りの段数から「あとxセット登ればいける……!」と気持ちを奮い立たせます。始皇帝が泰山に登ったのは40歳くらいのとき。僕とだいたい同じです。それで休憩18回って凄くね……?数えてませんけど、僕はその何倍かは休んでると思います。

南天門に到着したのは12:30。休憩含めて4時間ほどで登ってきたことになります。登山とかトレッキングすると毎回思うのですが、たった4時間でこんな遠くまで来れるんだなあ。

門の前で休んでいると、十八盤を登ってくる人夫さんが見えます。南天門のすぐ脇にはロープウェイもあるのですが、ロープウェイで荷揚げするわけじゃないんですね。これは大変だ。

天街-ホテル

山頂へはロープウェイで来る人も多いため、観光地化されてちょっとした町みたいになっています(天街)。町の食堂で拉麺を頼んで38元(約760円)。麓の三倍くらいでしょうか。

コーラの値段も、麓3~4元(60〜80円)、中天門8元(160円)、南天門12元(240円)くらいだったので2倍3倍と上がっていく感じです。

食後に一休みした後ホテルへ歩きます。ホテルは山頂のすぐ下にあるので、これからもう少し登らなければいけません。ちょっとした階段のたびに休憩しながらなんとかホテルへ到着。

ホテルの名前は「神憩賓館」。名前かっこよすぎんか。1泊約15,000円ですが、山頂ですしこんなものでしょう。カプセルホテルみたいな部屋やドミトリーも併設されていて、節約したいなら4,000円くらいからでも泊まれます。水回りはすこし古びてますが設備はいいです。

補足ですが、泰山山頂のような供給が少ないホテルは旅程の一〜二ヶ月くらい前にならないとホテル予約ポータルサイトに候補として出てきません。たぶん自前の予約サイトを優先していて、日程が近づいてきたらポータルサイトからの予約も受ける、みたいなことをやっていると思います。自前サイトから予約するか、ポータルサイトを定期的に確認するようにしましょう。

シャワー浴びて18:00ごろまで休憩した後、夕食と観光に出かけます。外へ出ると寒いというほどではないものの、風はかなり強いです。

夕食はまた天街の食堂で刀削麺38元(約760円)。昼とは違う食堂に入ったのにメニューとか容器が昼と同じでした。入り口だけ分けてバックヤードは共通化されてるのかな?

展望スポットを回って帰ります。ロープウェイは17:30で終わるため一気に人が減ります。せっかくなので山頂で一泊して余韻にひたるのがいいですね。

山頂手前に立つ「五岳独尊」の石刻。昼間は写真撮影スポットとして大人気ですが、夕方なら人はまばらです。

山頂には初日の出を見る人向けに、ダウンコートの貸し出し店がいくつも出ています。僕は自分の防寒着を持っているので借りませんでしたが、値札見た感じ60元(デポジット140元)。

20:30ごろに夜景を見に外へ出た時には風も止み、それほど寒くはありませんでした。この時期ならウィンドブレーカーとかで十分でしょう。

明日は日の出を見た後、曲阜を日帰り観光します。