今日は西安の郊外にある兵馬俑と始皇帝陵、半坡遺跡を観光した後、華山へ向かいます。
兵馬俑
兵馬俑は、中国陝西省西安市の臨潼区に位置する秦始皇帝陵の副葬坑に埋葬された陶製の兵士や馬の像です。
1974年に地元農民が井戸を掘る際に偶然発見され、その後の発掘によって約8000体に及ぶ兵士俑、馬俑、戦車が出土しました。
これらは秦の始皇帝が死後の世界でも統一国家を守るために造られたと考えられています。実物の兵馬俑は実際の兵士とほぼ同じ大きさで、髪型や服装、表情までが異なり、役職や隊列を再現しています。
兵馬俑坑は三つの主要な区画からなり、歩兵、騎兵、戦車兵などの編成を知る手がかりとなっています。現在は「秦始皇帝兵馬俑博物館」として公開されており、世界遺産「秦始皇帝陵及び兵馬俑坑」として登録されています。
兵馬俑は西安の郊外にあります。西安中心部からだと、直行の観光バスで行くのが一番簡単だと思います。
僕は帰りに別の観光スポットにも寄りたかったので、往復とも地下鉄で行ってみることにしました。
ホテル最寄りの北大街駅からだと1号線-9号線と乗り継いで、兵馬俑近くの秦陵西駅まで一時間ちょっと。秦陵西は9号線の終点ですが、ここまで乗ってくる人はほとんどいないようです。

秦陵西駅から兵馬俑までは5,6キロ離れています。路線バスもありますが、時間がないためタクシーで移動(20元、約400円) 。
※華清池(华清池)駅にある華清宮と兵馬俑間の観光バスが定期的にあるようなので、バスで行くなら西安中心部か華清池駅からの方が便利そうです。
兵馬俑のチケットは入場時間枠を指定しての事前予約が必要です。多少でも空いているかと思い、開館直後の朝8時から9時の枠を予約しました。料金はTrip.comで約2,500円。

入り口で音声ガイドを借ります(40元、約800円。デポジット100元)。言語は英語のみで日本語はありません。
入り口から博物館までは歩いて10分ほど。観光車もありますが、混んでいるため普通に歩きました。

一号坑
兵馬俑一号坑は、始皇帝陵の東約1.5キロに位置する兵馬俑坑群の中で最も大規模な坑です。
坑の面積は約1万4000平方メートルにおよび、数千体の陶俑と数百台の戦車、馬俑が配置されています。
内部は土壁で区画され、縦横に通路が走る構造で、主に戦闘隊形を取る歩兵と戦車兵が整然と並んでいます。兵馬俑は実際の兵士を模して作られ、顔や体格、髪型、服装にそれぞれ個性が見られます。一号坑は秦の軍団の主力を再現したものであり、始皇帝の権力と軍事力を象徴する重要な考古遺跡です。
坑の上部は大きな屋根で覆われています。建物の中に入ると坑を囲むように観覧用の通路が設けられています。平日の朝一番ですがすごい混雑です。
この日の外の気温は38度ほど。建物の中は冷房があるためそこまで暑くはありません。

人混みの間を縫って手すり側へ行くと、とてつもなく広い坑全体と整然と並ぶ陶製の兵士や馬の軍列が見渡せます。これは圧巻です。

坑の奥に向かって通路を歩きつつ、坑の中を眺めます。団体ツアー客とかが移動するとごっそりスペースが空くので、空きそうなところを見定めつつ焦らず待つ感じです。

坑内には解説の立て看板がありますが人混みでとても読めません。音声ガイドを借りてよかった。

一体一体はそれぞれポーズや顔つきが違います。前に観たドキュメンタリーでは、一体のパーツごとに分業で数ヶ月かけて作ったという説明がありました。全体だとどれくらいのの工数かかるんだ……?

始皇帝陵の建設は秦の始皇帝が13歳で即位したときから約40年かけて行われたと考えられています。漫画キングダムで主に描かれている頃にはもう作り始めてたってことか。この規模まで拡大したのは天下統一後らしいので、兵馬俑自体は実質10年弱くらいで作られたよう。
にしても、作るのも大変ですがこれを坑の中に運んで整然と並べるのも相当です。もし倒して壊してしまったら処刑されるんだろうな。もっとも、史記には「陵墓の建設に携わったものは殺され墓中に埋められた」とあるため、墓に関わった時点でどのみち未来はなかったのでしょう。
陶俑が立ち並んでいるのは坑の前半だけで、途中からは発掘中なのか破片が散乱しています。発掘当時はほとんどがばらばらに壊れていたそうなので、前に並んでいる陶俑も一つずつ根気強く復元したものを並べていっているのでしょう。

発見当初の陶俑は鮮やかな彩色が施されていましたが、空気に触れると数分から数時間で顔料が剥離し、現在のような素焼きの土色に変わってしまったそう。
目の前で色褪せていくのを見ているしかない当時の発掘者の心情は……。そうしたこともあってか、始皇帝陵自体の発掘はより技術が進歩するまで保留されているらしい。
坑の後半には復元作業を行なっているスペースがあります。ここで直されたものが坑内や博物館で展示されているんだな。

二号坑
兵馬俑二号坑の面積は約6,000平方メートルで、一号坑に次ぐ規模を誇ります。二号坑は、弩兵、歩兵、騎兵、戦車などが組み合わされた複雑な戦闘陣形をとっており、秦軍の実戦的な布陣を再現している点が特徴です。
特に、木製の戦車とそれを引く四頭立ての馬俑が見どころで、当時の軍事技術や車馬の構造を知る上で貴重な資料となっています。
また、発掘時には彩色が残る俑も多く発見され、秦代の彩色技術の高さを示しています。二号坑の俑は動きや表情が多様で、個々の兵士の役割が明確に表現されており、秦軍の組織力の高さを物語っています。

三号坑
兵馬俑三号坑は、一号坑と二号坑の西北部に位置し、1976年に発見されました。面積は約520平方メートルと三つの坑の中で最も小さい規模です。
内部の構造はコの字形をしており、出土した陶俑の数は約70体、さらに1台の戦車と馬4頭が確認されています。配置や装備の特徴から、三号坑は秦軍の指揮を司る司令部に相当する施設と考えられています。
俑の多くは文官的な姿をしており、頭巾をかぶり、手に巻物を持つものもあります。また、他の坑に見られる戦闘的な配置とは異なり、三号坑全体が静的で儀礼的な雰囲気を持ち、兵馬俑坑群全体の統率機能を象徴する存在として重要視されています。

文物陳列庁
博物館的なスペースで、復元されたものの中でも特に状態がいいものが展示されています。

近くで見ているせいかもしれませんが、一号坑に並んでいたものより甲冑とか細部の作り込みが凝っている気がします。

始皇帝陵
始皇帝陵は、中国陝西省西安市臨潼区に位置する秦の始皇帝・嬴政の陵墓です。
紀元前246年頃から38年にわたって建設され、秦帝国の威信を象徴する巨大な地下建造物として知られています。陵園全体の面積は約56平方キロメートルに及び、中心部の封土は高さ約50メートル、底部の一辺は約350メートルに達します。
地下には宮殿を模した墓室が築かれ、始皇帝の棺や副葬品が安置されていると考えられています。文献によれば、内部には水銀を川や海に見立てて流し、天井には星を象った宝石が飾られていたと伝えられます。
現在、主墓の発掘は保存上の理由から行われていませんが、陵の周囲からは兵馬俑坑をはじめとする多数の副葬坑が発見されており、秦代の権力と技術の粋を今に伝える重要な考古遺跡となっています。
兵馬俑の旅客中心前から始皇帝陵へは無料のバスが出ています。
バスは人が揃い次第発車……かと思ったら、満席になってもなかなか出発しません。結局、乗り切れないくらいにぎゅうぎゅうに乗車したところでようやく出発。

陵内は広く、いくつかの現物展示や博物館を観光車で回れます。入場チケットは兵馬俑と共通、観光車は15元(約300円)。

復元された秦始皇帝銅車馬。実物の二分の一くらいのスケールで、副葬坑から発見されたもの。肉感とか、馬具の精緻さとかがすごい。

兵馬俑の馬車や武器は木製のためほとんど朽ちていましたが、こちらはほぼ当時の形が残っています。


一通り見学して、タクシーで地下鉄駅まで戻りました。
半坡遺跡
西安市の東郊に位置する半坡遺跡は、中国新石器時代中期、約6000年前の仰韶文化を代表する集落遺跡です。
1953年に発見され、その後の発掘で住居跡、墓地、作業場、壺や碗などの彩陶器、骨器、石器などが出土しました。集落は環濠に囲まれ、住居は円形の竪穴式で、中央に炉を備えた構造が特徴です。
墓域と生活域が明確に区分されており、当時の社会構造をうかがうことができます。また、陶器には魚や人の模様を描いた彩陶が多く見られ、信仰や生活の様子を示しています。現在は「半坡遺址博物館」として整備され、発掘現場の一部をそのまま展示し、仰韶文化の実像を知ることができる場所になっています。
また地下鉄を乗り継いで、1号線の半坡駅へ。駅の通路では地元の人がたくさん寝ています(多分ホームレスじゃなく、やることない人達が涼みに来ている) 。
駅から少し歩いて博物館の入り口へ。入場料は55元(約1,100円)。
兵馬俑の混雑とは打って変わって数人の観光客しかいません。

博物館でもみた彩陶土器や尖底土器。

人面紋。この抽象化能力すごいな。ここまで抽象化できていても亀甲文字ができるまでさらに数千年かかるのか。


遺跡自体は屋根で覆われた屋内にあります。扇風機はありますが兵馬俑よりは暑いです。

通路から当時の住居跡が見られます。中央に置かれているのは骨壷で、社会的地位のない幼児は骨壷に埋葬されていたそう。

一方で成人は別の区画に土葬されており、いくつかが実物展示されています。
墓中では生前に切断されたとみられる人骨の断片(指や肢端など)が出土しています。これは生者の体の一部を切り取り死者と共に埋葬することで、死者と生者を結び直す宗教的儀礼と考えられているそう(割体)。

華山へ移動
西安の観光を終え、これから華山へ移動します。
華山周辺には三つ駅があり、高速鉄道なら華山北駅、普通列車なら華山駅か孟塬(もうえん)駅が最寄り。
高速鉄道の方が早いのですが、出発駅の西安北駅が少し離れているため西安市内の移動が面倒です。今回はホテルに近い西安駅から普通列車で孟塬まで行くことにしました。
※僕が乗った電車は華山駅に停まらないため孟塬から華山へ移動しましたが、あまり一般的ではなさそうです。
一旦ホテルへ戻り、タクシーで西安駅へ向かいます。


硬座(座席)だと冷房がないと死ぬため、スペースに余裕がある硬臥(二等寝台)にしました。孟塬までは一時間半ほどで約1,800円。
一室あたり3段二列の寝台席の一番上。寝転がれるので一等車より快適です。

しばらくくつろいでいると乗務員から声をかけられます。何かと思ったら、次が下車駅だからそろそろ降りる準備をしろと。まだ到着まで15分くらいありますけど……。
中国の鉄道だと下車駅手前で声をかけられるのは一般的なのですが、ちょっと早すぎんか。僕はいつもホーム見えてから下車準備するので適当にあしらおうとしたんですが許してくれません。結局、下車口で十五分くらい立って待機してました。

孟塬はかなりしがない町です。


駅前に一台だけ停まっていたタクシー(白タク)と話して華山のホテルへ(25元、約500円)。
明日は華山……ではなく函谷関に行ってきます。
 
  
  
  
  
