今日からゴビ砂漠へのプライベートツアーに行ってきます。
ゴビ砂漠ツアー
先日も書いたとおり、ゴビ砂漠は観光スポットが広範囲に点在しているため数泊でのグループツアーが一般的。ツアー形態や参加人数によりますが、英語でオンライン予約できるような外国人向けツアーだと2泊3日で8~10万円程度はするようです。
僕は一人で回りたかったので、ホテルに個人ツアーの手配をお願いしました。といってもガイドがつくようなフルパッケージではなく、運転手だけを雇って観光スポットを回ってもらう形です。
ゴビ砂漠は有名観光地なので、ホテルや旅行会社に頼めば一般的なおすすめ観光ルートを提案してくれます。僕が行きたい場所は提案された2泊3日のルートに入っていたのでそのままでお願いしました。
金額は運転手・ガソリン代など全部込みで見積もり約2,060,000トゥグルグ(約82,000円)。宿泊費や食費は実費精算になるため若干変動します。だいたいグループツアーと同じくらいの金額感なので、ガイド付きをとるか個人の自由を取るかって感じでしょうか。
運転手さんはガイドではないので観光スポットの中には付いて来ません。食事や宿泊場所などはよく行く場所に連れて行ってくれます。ですので、細かく場所とかを伝えなくてもあとは車に乗っていればいいだけです。
ゴビ博物館
朝からしとしとと雨。迎えに来てくれた運転手さんと合流します。

運転手さんは片言の英語が通じます。28歳と若いですが中古の日本車を2台持っており、個人事業主みたいな形でビジネスをしているらしい。
軽く会話しつつ、まずは最初の目的地であるゴビ博物館に向かいます。ゴビ博物館はダランザドガドの街中にあるので個人でも来れます。
ゴビ自然・歴史博物館は、2022年に開館した比較的新しい文化施設で、地域の自然や歴史を総合的に紹介しています。
展示は約4000点に及び、恐竜の卵や骨片などゴビ砂漠ならではの化石、かつて海だった時代を物語る貝や魚類の化石、さらには石器時代から鉄器時代にかけての考古学的遺物が並びます。
また、遊牧民の生活を伝える伝統工芸品や装飾品、宗教美術や楽器、地域に生息する動植物の標本も充実しており、砂漠の自然と人々の暮らしを多角的に理解できる場となっています。近代的な建物の中で地質や気候変遷を解説する展示も整備されており、南ゴビ観光の出発点として訪れる価値の高い博物館です。

入場料は2万トゥグルグ(約800円)。写真撮影は禁止です(後で気づきましたが写真撮影チケットが別であります)。
展示の説明はほとんどモンゴル語で、英語の記載があるものはほんの一部。細かい説明は読めないのでざっと回ります。
入ってすぐの半地下エリアにメインとなる恐竜の化石があります。フロアは大きくはないものの、タルボサウルス(ティラノサウルスの近親種)やプロトケラトプス(トリケラトプスの祖先)の化石が展示されています。
化石以外にもモンゴルの伝統楽器や住居、タンカ絵画と言われる宗教画やより最近の制服・勲章など、ゴビ周辺の文化にちなんだ展示が並んでいました。
チェス盤の駒がラクダとか馬とかになっているのが面白い。これはシャタルというモンゴル式チェスで、駒の動き方もチェスとは少し違うようだ。
ハフツガイト岩絵群
モンゴル南部、ダランザドガドの西方に位置するハフツガイト岩絵群(Khavtsgait Petroglyphs)は、ゴビ砂漠の山地斜面に広がる先史時代の岩刻画群です。
標高1700メートルほどの高地に点在する岩に、青銅器時代から匈奴時代にかけての人々が描いたとされる数千点の絵が残されています。岩絵にはヤクやラクダ、山羊、馬、鹿などの動物が生き生きと表現され、狩猟や放牧の様子、さらには人間の舞踊や戦闘の場面も見られます。
これらは当時の遊牧民の暮らしや信仰、自然との関わりを伝える貴重な記録とされ、モンゴルの考古学的文化財の中でも特に重要な存在です。
朝9時45分ごろ、市内を出発しました。最初はバヤンダライ(Bayandalai)という町へ続く舗装道路を軽快に進んでいましたが、途中で方向を変えて荒野へ。

舗装は途切れ、車は轍を頼りに未舗装路を進みます。轍も一本道ではなく、ところどころで折れ曲がったり分岐したり、運転手は何を目印に道を覚えているのだろう。地面は雨で泥濘んでおり、しばしばタイヤが滑ります。
約二時間ほど荒野を走り、目的地の「ハフツガイト岩絵群」に到着しました。小高い丘の中腹に駐車場(ただの空き地)があり、見上げると丘の上に続く登山道が見えます。

少し傾斜がある道を30分ほど進みます。

登山道の脇の岩を見渡しつつ歩いていると、頂上付近の岩にぽつぽつと岩絵が現れます。

岩絵があるあたりからは傾斜が緩やかになり、さらに奥へ進むと割と大きなものも。シンプルなものからよりデフォルメが効いたものまで、時代によってスタイルが違うのでしょうか。

動物の書き方も直線中心のシンボリックなものや丸みのある躍動感が感じられるものまで様々。以前に見たタバン・ボグドのシンプルな岩絵とはまた違う印象を受けます。

本来なら頂上からゴビ砂漠を一望できるそうですが、この日はあいにく霧が立ちこめていて視界は限られていました。頂上付近をぐるっと一周したあと麓に戻ります。
麓から岩絵までは往復でおよそ1時間。下山する途中で少し霧が晴れ、荒野の一部が見渡せました。

バヤンザグへ
車は再び荒野を走りブルガン(Bulgan)という町へ向かいます。
路面はウォッシュボード現象で細かく波打っています。これはスピードを出した車が路面の振動で浮き沈みし、路面が一定間隔で削られてできるもの。突然僕たちの車もガタガタ揺れます。

運転手が紹介してくれた食堂で一緒に昼食をとります。観光客向けの食堂らしく見た目はきれいで英語メニューもありました。

14時半ごろバヤンザグ(Bayanzag)の近くへ到着。周辺には宿泊用のユルトが点在しています。運転手に今夜泊まるユルトへ案内してもらいしばらく休憩します。

フレーミング・クリフ
モンゴル南部のゴビ砂漠に位置する「フレーミング・クリフ(Flaming Cliffs)」は、世界的に知られる恐竜化石の発掘地で、夕日に照らされる赤褐色の断崖が炎のように輝くことからその名が付けられました。
1920年代にアメリカの探検家ロイ・チャップマン・アンドリュースがここで恐竜の卵化石を発見したことは古生物学史上の大発見であり、以来この地は恐竜研究の聖地とされています。断崖は柔らかな砂岩層から成り、数千万年前の生態系が眠る化石の宝庫でもあります。
現在も化石が発見される可能性が高く、訪れる人々は地質学的な迫力と太古の記憶が宿る大地の空気を同時に味わうことができます。荒涼とした砂漠に浮かぶ赤い断崖は風景としても壮大で、自然と歴史の神秘を体感できるモンゴルを代表する観光地のひとつです。
フレーミング・クリフは夕方の時間が最も綺麗、ということでしばらく休んで16時半ごろに出発。
(用語としてはバヤンザグ=フレーミング・クリフらしいんですが、ここでは前者を地域全体、後者を崖自体の意味で書いてます)
入場ゲートで入場料を払います(10,000トゥグルグ、約400円)。
ゲート脇に小さなメディアセンターがあり、解説動画を視聴できます。1920年代のゴビ砂漠の探検を紹介する古いドキュメンタリーで韓国語字幕がついていました。
この探検は自動車を使った最初の大規模遠征と言われており、道など何もない荒れ地を当時の自動車が進んでいく様子が映し出されています。これと比べるとタバン・ボグドのロシア車とか楽なもんです。
動画を見た後、車で少し走ってフレーミング・クリフへ。駐車場で車を降りて少し丘を登ると、大きな赤茶けた泥の崖が広がります。

崖の上には遊歩道も整備されており一周できるよう。

このフレーミング・クリフは、1920年代に世界で初めて恐竜の卵が発見された場所として知られています。いまもこの近くにまだ見ぬ大きな化石が眠っているのかな、と考えながら歩きます。


散策をしていると急に空が暗くなり、強い雨が降ってきました。雨水に削られた赤い土が崖を流れていきます。こうして長い年月をかけて崖が作られたんだろうな。

泥の粘性の違いか、奇岩のように削られて特徴的な地形が続きます。


車にもどり、反対側にある展望台から崖全体を眺めます。

展望台の近くには「茶の道」にちなんだラクダの像が並んでいます。

「茶の道」とは、17世紀から20世紀初頭にかけてモンゴルを横断していた大交易路で、中国の茶葉をロシアやヨーロッパに運ぶルートだったそう。フレーミング・クリフ周辺はその「茶の道」の交易路としてキャラバンが行き交っていたようだ。そうなると探検時点で全く未開の地というわけではなかったんだな。
夜は宿泊先のユルトで夕食。てっきりまたブルガンまで出かけるのかと思いきや、ユルトに食事も付いていました。このユルトには温水シャワーも水洗トイレもあり快適です。

明日はホンゴル砂丘へ向かいます。