稲城亜丁: 地球最後の楽園へ

チベット

タシデレ!今日は東チベットの秘境、稲城亜丁ダオチェン・ヤーディン (Daocheng Yading)を観光します。

稲城亜丁はその絶景の割に日本ではあまり知られていませんが、中国では超有名観光地の一つ。みんなが一生に一度は絶対に行きたいと憧れる国民的スポットで、「地球上で最後のひとひらの清らかな土地」などと呼ばれています。

稲城亜丁とは

亜丁自然保護区(Yading Nature Reserve)は、中国四川省の標高4,000メートルを超える高地に位置し、チベット仏教の聖地として知られる3つの壮大な雪山に囲まれたエリアです。

この地には、年間を通じて融けない氷河を冠した鋭い峰々がそびえ立ち、その麓には広大な高山草原や針葉樹の原生林が広がっています。雪解け水は透き通った川となって渓谷を流れ、標高4,500メートル付近には、鉱物質を含んだ独特の青や緑の色合いを見せる牛奶海(Five Color Lake)や五色海(Milk Lake)などの高山湖が点在しています。

四季を通じて、春や夏には高山植物の高山植物が咲き誇り、秋には落葉松が黄色く染まるなど、標高や季節によって植生がダイナミックに変化する生態系が維持されています。

稲城亜丁は「シャングリラ」の由来となったジェームズ・ヒルトン『失われた地平線』のモデルの一つと言われています。

ヒルトン自身は中国に一度も行ったことがなく、当時の探検家ジョセフ・ロックが『ナショナル ジオグラフィック』誌に寄稿した記録や写真をもとに理想郷「シャングリラ」を創り上げました。

稲城亜丁もジョセフ・ロックが探検した場所の一つで、小説の山々の描写はまさに稲城亜丁って感じです。

ロックが探検した当時の稲城亜丁周辺は匪賊に完全に支配されており、行商人の略奪や殺人が横行する地域として知られていたそう。ロックも探検家という言葉から想像するような少数精鋭のパーティではなく、200人近い軍隊を組成して探検していたらしい。

まあ開平とか福建ですら住宅を要塞化しないと住めないくらいなので、チベットの奥地なんてそれ以上でしょう。そんなところを平和に旅行できる現代に感謝です。

稲城亜丁への行き方

稲城亜丁の最寄りの街は香格里拉「鎮(町)」です。

空路で行く場合、車で三時間ほどのところに稲城亜丁空港があります。

陸路で行く場合、高速鉄道駅のある香格里拉「市」から行くのが簡単です。市と鎮でどちらも香格里拉なのでわかりにくいですが、こちらに書いた通り全く別の市/町です。

成都から昆明を経て香格里拉(シャングリラ)市へ
ニイハオ!今日から成都を離れて香格里拉市へ向かいます。中国には香格里拉(シャングリラ)という地名が二つあります。香格里拉市属する省: 雲南省近くの観光地: 松賛林寺、梅里雪山香格里拉鎮属する省: 四川省近くの観光地:稲城亜丁一般には「香格里…

香格里拉市からは一般的には以下のようなルートになります。

  • 香格里拉市から香格里拉鎮へ: バス、乗り合いタクシー
  • 香格里拉鎮から稲城亜丁景区入口へ: タクシー、乗り合いタクシー

香格里拉市から香格里拉鎮へ

香格里拉市から香格里拉鎮への直行バスは一日一本で、朝8:30にバスターミナル(香格里拉汽车客运站)発。運賃は148元(約3,400円)。

行先は亜丁(亚丁、ヤーディン)行きと伝えれば大丈夫です。

稲城亜丁景区の中には亜丁村というまた別の村もあってわかりにくいのですが、外から「亜丁」行きのバスに乗ると香格里拉鎮に着きます。

香格里拉鎮から稲城亜丁景区入口へ

観光客の多くは香格里拉鎮に宿泊するよう。香格里拉鎮から景区入口へは4kmほど距離があるため、タクシーか乗り合いタクシーで移動します。

車はホテルで呼んでもらうか、バスターミナル前の大通りの客待ちを捕まえるのが楽です。DiDiも数台はいるため一応使えます。

  • タクシー: 30元くらい
  • 乗り合いタクシー: 10元

景区入口すぐ近くの仁村にも宿泊施設はありますが、入り口まで上り坂があるのでどっちに泊まっても車移動が必要だと思います。

また、景区内の亜丁村に宿泊することもできます。こちらは景区内なので翌日以降のチケットチェックはないようです。

稲城亜丁のチケット

観光には入場チケットとバスチケットが必要です。景区入口から観光スポットまではバスで一時間くらいかかり、とても歩ける距離ではありません。

  • 入場チケット
    • 有効期限3日間
    • 150元
  • バスチケット
    • 有効期限1日
    • 120元 (2日目以降は半額60元)

Trip.comでは両方のセットチケットが販売されており、僕が購入した時のレートでは5,600円ほどでした。当日は有人カウンターで紙チケットへの引換が必要です。

二日目以降のバスチケットは有人カウンターで都度購入する必要があります。購入は当日のみで事前購入はできないようです。

長距離バスで香格里拉市から稲城亜丁へ

香格里拉鎮への直行バスは一日一本で朝8:30発。時間にあわせて香格里拉市のバスターミナルへ向かいます。

チケットには座席番号が印字されており、飛来寺行きと同じでちゃんと指定席が機能しているパターンです。

バスは定刻通りに出発。ほぼ満席だったので、朝早めに行くか前日のうちにチケット購入したほうがいいかもしれません。僕は前日に買っておきました。

一時間ちょっとで飛来寺との分岐へ。数か月前に通った道が谷の向こうに遠ざかっていきます。ここからは未知のルートです。

この辺で公安の検問があります。バスの車内に公安が入ってくるタイプではなく、一度バスから降りて公安の建物内で手続きを行う必要があります。

中国人は身分証スキャンだけですが、外国人は別室に連れていかれてフォームに個人情報を記載します。

フォームと言っても、あらかじめ印刷されたフォームをみながらまっさらな白紙に必要情報を書いていく感じです。コピー代節約のためかな?こんな紙に書かせても情報管理できないだろ。

同じバスには外国人が6人くらい乗っており、みんな欧米人です。

以降も何度か公安がバスに乗り込んでくるタイプの検問があります。欧米人がいると公安の目がそっちに向くので、僕は目だたずにやり過ごせました。

バスは険しい山道を進みます。崖を削ったカーブだらけの道ですが綺麗に舗装されており、ラオス山奥の荒れた道とは大違いです。

11:30ごろに小さな商店で休憩。

屋台で洋炸芋(炸洋芋ともいう)6元。雲南省や四川省のローカルフライドポテトですが、花椒が入っていてめちゃ辛い。赤い部分を避けて食べます。

ここから4,000メートル越えの峠に入り、周囲にはちらほら残雪も。手元の高度計だと最大標高が4,600メートルを超えていてビビりました。

香格里拉鎮に到着

バスは15時前に香格里拉鎮へ到着。標高は2,900メートルほどでさっきの峠よりもだいぶ下がりました。

ド田舎の小さい村かと思いきや意外と大きい町です。

近くにあったCotti coffee(庫迪咖啡)で休憩。これは中国最大のチェーンであるLuckin Coffeeの創業者が新しく立ち上げたブランドで、東チベットだとLuckinよりもよく見かけます。

稲城亜丁を観光

景区内には大きく二つのトレッキングルートがあります。

  • 短距離ルート (短線): チベット寺院の沖古寺から、三つの聖なる山(三神山)のひとつ仙乃日をのぞむ珍珠海を往復する
    • 距離: 往復で約3km
    • 所要時間:約2〜3時間
  • 長距離ルート (長線): 三神山をのぞむ洛絨牛場から標高4,600mの牛奶海・五色海を往復する
    • 距離: 往復で約10km
    • 所要時間:約6~7時間

僕が行った冬期の間は景観の回復のため長距離ルートが途中から閉鎖されていました。掲示をみるとあと数日で開放されるようなのですが……残念ながらそれまで滞在することはできません。

今回は二日間かけてそれぞれのルートを歩いてみることにします。

入口から景区へ

翌朝、DiDiでタクシーを呼んで景区入口へ。有人窓口で紙チケットを発券してもらい、入場ゲートへ向かいます。

景区内バスに乗車。座席は左側の方が山が良く見えます。

バスは一時間ほどかけて観光スポットへ向かいます。

途中の展望台で一時停車して撮影タイム。向うに見える山が仙乃日シェンナイリーです。

遠目でもすごい迫力だ。

翌日乗ったバスでは撮影タイムがなかったので、展望台に寄りたい人はバスに乗る前に係員に聞いたほうがよさそうです。

短距離ルート (短線)

一日目は高度順応のため比較的簡単な短距離ルートを歩きます。

これは冲古寺という標高約3,900mにある古いチベット仏教寺院をスタートし、標高約4,100mの珍珠海(卓玛拉措ジュアマラツォ)を往復するコースです。

スタート地点からすでに神々しい。

整備された歩道をなだらかに登っていく感じです。

そこら中に猿がいます。そんなに凶暴ではなさそう。

ここは比較的軽めのコースということで、一時間ちょっとでゴールの珍珠海に到着しました。

珍珠海を経て仙乃日の麓近くをぐるっと回れるルートがあります。山が近いので押しつぶされそうな迫力です。

帰りに冲古寺を見学。

短距離ルートは思ったより短かったので、帰りに冲古草甸という草原(牧場)のまわりをぐるっと一周して帰ってきました。

左奥に見えるのが三神山のひとつ、夏諾多吉シアヌオドゥオジー

長距離ルート (長線)

翌日は長距離ルートへ。上の通り現在は閉鎖されていますが、行けるところまで行ってみます。

観光バスの終点から、ルートのスタート地点である洛絨牛場までは観光カートが運行しています。

冬期の営業は10時からと書いてありましたが、9時半ごろには動き始めていました。運賃は片道40元(約920円)、往復70元。

牧場に到着。周囲が雪を被った山々に囲まれすごい景色です。

三神山のひとつ、央邁勇ヤンマイヨン

道はなだらかな登りですが、標高が高いため息が切れます。

その辺に謎の鳥がいました。人に慣れているのか逃げません。

40分ほどで湖に到着。思ったより開放されている区間は短かった。

閉鎖されている後半区間はこれまでのルートより滅茶苦茶きついらしい。残念なようなほっとしたような。

帰りは別ルートを歩いて戻ります。この残雪の景色はいいなあ。

だいぶ時間があるので、帰りは観光カートを使わずに6kmほど歩いて帰ることに。なだらかな下りなので楽です。

明日は乗り合いタクシーで理塘(リタン)という町に向かいます。

最果て度評価

最果て感があったスポットを勝手に評価します。観光地としてではなく、最果てスポットとしての評価です。

  • 難易度: アクセス、言語的な困難など到達の難しさ
  • 費用: 到達するまでの費用 (★: ~10万円、★★: ~50万円、★★★: それ以上)
  • 所要日数: 移動や滞在期間含めた日数 (★: ~1週間、★★: ~2週間、★★★: それ以上)
  • 最果て感: どれくらい最果て感があったか。物理的な隔絶度でなく、僕が「果てっぽいな」と感じた度合い

稲城亜丁

  • 難易度: ★☆☆
    • 有名観光地であり、公共交通機関で簡単に行ける。
  • 費用: ★☆☆
    • 陸路で行く場合、昆明から高速鉄道+長距離バスで片道一万円くらい。
  • 所要日数: ★☆☆
    • 標高が高いため高所順応含めて往復5~6日はみたほうが良いと思う。
  • 最果て感: ★★★
    • 三神山をはじめ大迫力の山々に囲まれた、チベットでも有数の絶景。4,000メートル級の高地であり、見た目の雰囲気はエベレストBCトレックの後半 (タンボジェ、ディンボチェとか)みたいだなと感じた。そう考えると、トレッキング不要で公共交通機関+観光バスで比較的簡単にアクセスできる割に最果て感は凄まじい。
    • 冬期に行ったためピークに比べれば観光客が少なく、三神山の静謐な雰囲気に浸ることができた。