チャータータクシーで恒山と雲崗石窟へ (2025/6/23)

中国

ニイハオ!今日はタクシーをチャーターして、大同郊外の恒山と雲崗石窟を観光します。

タクシーのチャーターは前日にホテルに依頼しています。フロントにルートごとのタクシー手配料が掲示されており、恒山・木塔・雲崗石窟を回って380元(約7,600円)。現時点でまだ改訂されていない「地球の歩き方2020」に書いてある5年前の目安料金500〜600元よりだいぶ安いので少し不安です。

出発時間はこちらで指定できますが、よくわからなかったので8時でお願いしました。

大同チャータータクシーツアー

そして今日。少し早く7:50ごろにフロントへ行くともう運転手さんが待っていました。時間通りに来ることは期待してなかったので少し嬉しい。海外にいると幸福を感じる閾値が下がります。

車はメータータクシーではなくホテルと契約してる白タク(?)です。

出発してすぐ、運転手さんに高速乗るかどうか聞かれます。高速に乗るなら当然 通行料がかかります。ホテルの手配料にはこういう諸経費が入ってないから安かったのかな。下道だと時間かかりそうですし、通行料もそれほど高くはないので高速で行ってもらうことにしました。

地方都市の高速道路も片側三車線でよく整備されています。数十キロおきくらいでパーキングエリアもあるようです。

道路標識によると北京まで326キロ。北京から結構 旅してきた気がするけどそんなもんか。

大同から南へしばらく走り、一山超えると恒山が見えてきました。

恒山

出発から1時間ほどで恒山の旅客中心へ到着しました。

恒山旅客中心から行ける観光スポットは二つあります。

  • 恒山: 先日登った泰山と同じく五岳の一つ。ロープウェイで簡単に山頂まで登れる
  • 懸空寺: 恒山の崖に張り付くように建てられた寺院で、登って建物内に入れる

最近だと恒山自体よりも懸空寺の方が映えスポットとして人気ありそうです。

懸空寺

懸空寺(けんくうじ)は、北魏時代(約1500年前)に創建されたと伝えられ、恒山の断崖絶壁に木造の伽藍が張り付くように建てられています。標高約75メートルの崖壁に、細い木柱と岩の窪みに支えられて巧みに設計されており、まるで空中に浮いているかのような景観が特徴です。

懸空寺の特筆すべき点は、仏教・道教・儒教の三教を一体に祀っている点です。境内には、釈迦、老子、孔子などが同時に祀られ、それぞれの教義が共存しています。現存する建物は主に明・清代に改修されたもので、16の殿堂が岩肌に連なる構造は、建築技術と信仰心の融合の象徴といえるでしょう。現在では国家重点文化財にも指定されており、訪れる人々をその歴史と絶景で圧倒しています。

懸空寺には2種類のチケットがあり、麓から眺めるだけなら25元(約500円)、登って寺の中に入るなら115元(約2,300円)です。

寺に入れるチケットは午前午後の時間帯別で人数制限があり、時間帯ごとにウェブ予約枠と当日枠があります。昨日予約しようとしたらウェブ予約分は既に上限に達していました。

ということで、「当日券が残っていれば登ってみようかな」くらいの気持ちで来たのですが、到着した9時過ぎくらいの時点でまだ50枚ほど残っていました。確実に登りたいなら事前にウェブ予約したほうがいいでしょう。

懸空寺と恒山へはタクシーの乗り入れはできず、旅客中心から送迎バスが頻発しています(20元、約400円)。

どちらか片方だけ観光する人も多いようで、懸空寺と恒山それぞれでバスが分かれています。

9:20ごろに懸空寺へのバスに乗車し、15分ほど走って懸空寺の停留所に到着しました。思ったよりも街の近くなので秘境感はないです。

懸空寺にはチケットの枚数制限のほか、同時に建物内に入れる人数にも制限があります。長い時は2〜3時間待つこともあるそう。今日は平日ですが2時間くらいは覚悟します。

写真の真ん中が寺に入るための行列です。思ったより人が少なかったため、この時は「平日だし空いてるのかな……」とか思ってました。

20分ほど待って入口のゲートをくぐります。これで寺に登れるかと思いきや、ゲートの先に本当の待機列が。

思い返してみればチケット買った時点で午前枠のほぼ最後だったので、入場も午前枠のほぼ最後になりますよね……。

待機列からは寺がよく見えます。何本かの杭だけで建物と通路が支えられています。杭の位置や角度がまちまちなのは緻密な計算に基づいているからで、適当に作ったわけではないと信じたい。

崖自体が大きいので相対的に低い位置にあるように見えますが、約75メートルと結構な高さです。

しばらく虚無の時間を過ごしたあと、11時半ごろに寺の中に入れました。入口からだと2時間20分待ちでテーマパークのアトラクション並みです。僕の到着は遅すぎたので、なるべく早い時間に着いて並んだほうがいいですね。

建物は崖の窪みの中にあるのと、床の板は割としっかりしているので高度感はありません。

寺の中も行列ができているため、観覧するにもしばらく時間がかかります。30分ほどで一周して外へ出ました。

恒山

すでに時刻は12時過ぎ。そろそろ時間がないですが恒山も一目見ておきたいと思い、懸空寺から恒山行きの送迎バスに乗ります。

10分ほど走って恒山の駐車場に着きました。残念ながら山頂まで行く時間はないので、バス停から見るだけで折り返します。

登るなら入場45元、ロープウェイ往復140元で、一時間くらいは必要そうです。

旅客中心に戻ると運転手さんから昼食に誘われました。近くにあった運転手さんの知り合いの屋台で涼粉というものを食べます。これはこの辺の名物料理らしい。

値段は15元(約300円)。個人的にぼったくられているのか観光地価格なのか、ちょっと高い気がします。見た目からは10元しないくらいじゃないかと思いましたが、一人なら食べないと思うので体験料として気持ちよく払います。

応県木塔

昼食の後は再びタクシーに乗り、13:50くらいに応県木塔へ。ここはもともと来る予定はなかったのですが、ツアーのルートに入っていたので来てみました。

「応県木塔(おうけんもくとう)」は、世界最古かつ最高の木造塔として知られています。正式名称は「釈迦塔」で、遼代の1056年に建立されました。塔の高さは約67メートルにも及び、全体が一切の釘を使わずに木組みだけで造られている点が大きな特徴です。設計には高度な構造工学が活かされ、地震や風にも耐えうる強靭さを持っています。

この木塔は、外観上は5層、内部構造では実際には9層(5つの明層と4つの暗層)から成り立っています。各層には仏像や壁画が安置されており、宗教的・芸術的価値も極めて高いと評価されています。特に初層の内部に祀られている巨大な釈迦如来像は、創建当初の姿を今に伝えています。

法隆寺の五重塔と比べ、完全木造であることと楼閣式木造塔であることが主な違いのよう。つまり中国的な定義で世界最古を名乗っているようです。

また、法隆寺の五重塔は舎利を納めた卒塔婆で、応県木塔は塔の各層で仏教的な世界を表現してる、ということで宗教的な意図がそもそも違います。ちょうど読んでいた 中村圭志『宗教図像学入門』にも塔に関する記述がありタイムリーでした。

駐車場からは送迎バスがあり往復10元(約200円)。入場料は50元(約1,000円)です。

塔は思ったよりも大きく迫力があります。これは来てよかったな。

残念ながら中に入れるのは1階のみで、上階には登れません。

出口の案内に従って南側の出口から出ると観光街があります。送迎バスに乗るために東側に戻りたかったのですが、通路が塞がれていて東側へ抜けられません。かなり大回りして戻りました。

14:30くらいに応県木塔を出発し、本日のメインである雲崗石窟へ向かいます。

木塔から雲崗石窟へは高速道路だと遠回りになるため、農道のようなところをショートカットしていきます。この辺は道路がところどころ荒れていてメンテナンスされていないよう。途中で高速道路に合流し、1時間ほどで雲崗石窟に着きました。

雲崗石窟

雲崗石窟(うんこうせっくつ)は、5世紀後半、北魏王朝の時代に造営が始まった中国仏教石窟芸術の代表的遺産です。北魏が都を平城(現在の大同)に置いた時期、仏教を国家宗教として奨励する中で、仏教文化の象徴として造られました。造営の中心となったのは高僧・曇曜で、特に第5~第20窟は彼の指導による「曇曜五窟」として知られています。

全体では大小合わせて45の主要窟、約250の小窟があり、5万体以上の仏像が刻まれています。中でも高さ17メートルを超える巨大な坐像は圧巻で、厳かな雰囲気とともに北魏仏教美術の力強さと繊細さが共存しています。初期はインド・西域風のスタイルが色濃く、後期には中国的な写実性が増していきます。雲崗石窟は2001年にユネスコ世界遺産に登録され、仏教芸術・建築技術・歴史の粋を今に伝える貴重な文化遺産として、世界中の旅行者を魅了し続けています。

運転手さんとの待ち合わせ場所を決めて、入口へ入ります。入口がホテルの受付みたいになっていてちょっとビビりました。

チケットは前日にTrip.comで予約して約2,400円です。

入場して石窟のほうへ歩いていると、後ろからシャトルバスに追い抜かれました。他にも歩いている人が多かったのでバス乗り場あったのに気づきませんでした。

そのまま歩いて東側から順に回っていきます。最初のほうの石窟は中に入って中央の仏像の周りを一周できます。といっても非常に混んでいるため、自由には歩けず人混みに流されながら進む感じです。

これ、時間帯別にチケットの価格分けるとかして空いている時間作ってほしい……。

このへんの石窟は比較的後期にできたようで、造形が細かくて僕は好きです。

16~20窟は昙曜五窟といい、雲崗石窟の中でも最初期にできたもの。それぞれ北魏の皇帝をあらわしたており、仏教を通じた統治正当化=国家仏教の始まりとして歴史的価値が高いらしい。

18窟。

最も有名な20窟。

確かに大同の華厳寺でみた仏像(遼代)とはだいぶ造形が違います。この辺はガンダーラ美術の影響を強く受けているということですが、素人目に日本や百済の初期仏像と比べると100年~200年で一気に変わった感じなのでしょうか。

運転手さんと夕食

ツアーも終わったのでホテルに戻って精算します。高速道路料金はETCの表示からだいたい以下くらいでした。

  • 大同-恒山: 25元
  • 恒山-木塔: 15元
  • 木塔-雲崗石窟(一部): 12元

僕はチップも含めて追加で150元払いました。チップ含めて合計すると530元(約10,600円)で、ガイドブックに書いてあった相場くらいです。

その後、運転手さんに誘われて夕食へ。最初、移動中に誘われた時は社交辞令だと思って適当にあしらっていたのですが、本当に行く気だったようです。ほとんど言葉は通じないながら、移動中もいろいろ気にかけてくれたので行ってみることに。

一度ホテルに荷物を置いて、運転手さんの車で移動します。車はなぜか街の外に向かい、食堂とかもなくなってきたので「変なところへ連れて行かれるのでは」と警戒しましたが運転手さんの自宅に寄っただけでした。

運転手さんの自宅は街はずれの高層団地で外見は結構きれいです。こういう建物はもうちょっと高所得層向けかと思っていましたが、庶民レベルがよくわからないな。

車を置いてタクシーで街へと戻り、食堂「虾先生」へ。この食堂は大同周辺に何店舗かあり、普通のローカル食堂よりは店内がきれい目です。

注文は運転手さんに任せて、串いろいろとエビの何か、あとはビール6本くらいを注文。自分がビール飲みたかったからタクシーで来たんだな……。

一人だとこういった複数人向けの料理は頼めないのでたまにはいいですね。運転手さんに殻を口で取る食べ方とかを教えてもらいながら食べます。ビニール手袋で翻訳アプリが使えないのでコミュニケーションはほとんど身振りだけでした。

会計はまとめて210元(4,200円)。周辺は地元の歓楽街のようで、店の外へ出るとかなり賑わっています。

酔い覚ましもかねて30分ほど歩いてホテルへ帰りました。

明日は二連へ移動します。