ヴァイシュノ・デヴィ寺院: ヒンドゥー屈指の聖地で片道13kmの山道を巡礼

インド

ナマステ!今回はカトラという街に移動し、ヒンドゥー教の聖地であるヴァイシュノ・デヴィ寺院(Vaishno Devi Temple)に巡礼します。

ヴァイシュノ・デヴィ寺院(Vaishno Devi Temple)は、インド北部トリクタ山の洞窟内に位置する、女神シャクティ(Shakti)信仰の聖地です。

叙事詩『マハーバーラタ』において、アルジュナ(Arjuna)が戦勝を祈願した地としても言及されます。伝説では、悪魔バイラヴ・ナート(Bhairav Nath)に追われた女神ヴァイシュノ・デヴィ(Vaishno Devi)が身を隠して瞑想し、最終的に彼を討ち取った後に肉体を脱ぎ捨て、岩の姿となって洞窟へ永遠に留まったと伝えられています。

寺院の中心である聖なる洞窟の奥には自然石の突起である「ピンディ」と呼ばれる3つの岩塊が祀られています。それぞれがヒンドゥー教の三大女神を象徴しています。

また、洞窟内には「チャラン・ガンガー」と呼ばれる清らかな冷水が足元を流れており、巡礼者はその聖水に足を浸しながら拝観します。

ヴァイシュノ・デヴィ寺院は日本ではあまり知られていないと思いますが、ヒンドゥー教徒にとっては「南のティルパティ、北のヴァイシュノ・デヴィ」とも言われるトップクラスの聖地です。

日本で言うと伊勢神宮とかそれくらいの格でしょうか。

寺院は麓の街カトラから13kmほど山道を登った山中にあります。今回は、徒歩でヴァイシュノ・デヴィ寺院まで巡礼してきました。

カトラへの行き方

デリーやシュリーナガルからだと鉄道で行くのが簡単です。

カトラの鉄道駅は「Shri Mata Vaishno Devi Katra Railway Station (SVDK)」。

所要時間や運賃は列車や座席によって違いますが、一番早いヴァンデ・バーラト(Vance Bharat)急行だと以下くらいのよう。

  • デリー ⇄ カトラ
    • 所要時間: 約8時間
    • 運賃:
      • ACチェア(CC):1,700Rs前後
      • エグゼクティブ(EC):3,000Rs前後
  • シュリーナガル ⇄ カトラ(Katra)
    • 所要時間: 約2時間30分〜3時間
    • 運賃:
      • ACチェア(CC):900Rs前後
      • エグゼクティブ(EC):1,500Rs前後

僕はシュリーナガルを14時発のヴァンデ・バーラト急行を予約して、運賃はエグゼクティブ・クラスで1,520Rs(約2,600円)でした。

シュリーナガルからカトラへ高速鉄道で移動

シュリーナガルのハウスボートを後にして、リクシャーでシュリーナガル駅へ。

駅前には複数の装甲車が鎮座し、自動小銃を手にした警備兵が鋭い視線を配っています。

駅のホームはもちろん、車内にも銃を手にした軍人が多数乗車し定期的に巡回しています。

ECクラスの食事。まずはスイート&サワー風味のとろみのあるスープ。

揺れる車内でこの下皿とかいるのかな……?インド人にとってはこうした小道具に贅沢感を感じるのかもしれない。

メインの容器はシンプルなのでギャップが際立ちます。

列車は15時頃にアナンタグ(Anantnag)を抜け、峻険な山脈へ突入。景色を楽しみにしていたのですが、ほとんどトンネルで外は見えませんでした。

列車は定刻通り、三時間ほどでカトラの駅に到着しました。

完全純粋菜食の街カトラ

カトラはヒンドゥー教の女神信仰において極めて清浄な地とされているため、自治体全体が法的に「完全純粋菜食(ピュア・ベジタリアン / Pure Vegetarian)」および禁酒地区に定められています。

そのため、肉類や魚介類はもちろん、卵の持ち込みや提供すら固く禁じられています。

これは外資系のホテルやチェーン店も例外でなく、マリオットやマクドナルドですら肉系のメニューは一切ありません。

宿泊したマリオットの朝食

僕は肉食禁止の街があることすら知らなかったので、どこに行っても肉が食えないので驚きました。

同じように完全純粋菜食の街はインド内にいくつかあり、有名どころだとリシュケシュやプシュカルも肉は食べられないようです。

カトラ・マリオット・リゾート(Katra Marriott Resort & Spa)

カトラの中心部から少し離れた郊外にあります。料金は一泊約7,500Rs(約12,800円)ほど。

ホテルからは駅や巡礼ルートの起点まで専用の無料送迎車が運行されており便利。

館内レストランは上記の通り菜食のため肉や卵を使った料理は一切ありません。洋食だとピザやパスタなどは食べられます。

プラチナステータスのおかげでバルコニー付きの部屋にアップグレードしてもらえ、部屋にはケーキも置かれてました。

ヴァイシュノ・デヴィ寺院への巡礼方法

巡礼登録

ヴァイシュノ・デヴィ寺院へ巡礼するためには、事前に巡礼者登録センターで「ヤトラ登録カード」を入手する必要があります。

登録センターはカトラの鉄道駅やバスターミナルなど複数あります。

バスターミナルの窓口は街から登山道へ行く途中にあり、24時間営業なので便利です。

外国人は発行にパスポート提示が必要。発行料金は無料です。カード発行から六時間以内に入山する必要があります。

カードにはRFIDが付いており途中でチェックされる場合もあるようなのですが、僕が行った時は何のチェックもありませんでした。

巡礼ルート

登山口から本殿までは約12k〜14km、標高差は1,000mほどあります。コースタイムは登り片道で5〜6時間ほど。

ルートは良く整備されており、大部分には屋根もついています。とはいえ、暑くなるため早朝に出発するのが一般的なよう。

ルートは大きく二つあり、途中で合流します。

  • 旧道(バーンガンガー経由 / Ban Ganga Route)
    • 距離:約12km〜13km
    • 特徴:階段や舗装路が続き、露店が多くて賑やか。馬やパルキ(駕籠)も通るメインストリート。
  • 新道(タラコート・マーグ経由 / Tarakote Marg Route)
    • 距離:約14km〜14.5km(旧道より少し長め)
    • 特徴:勾配がゆるやかに設計された新しい舗装路。馬の通行が禁止されているため、動物のフンや臭いがなく、景色も静かで歩きやすい。

巡礼方法

体力に自信がない場合は歩かずに登ることもできます。

    • 運賃: 約1,250Rs
    • 特徴:登山口(バーンガンガー / Ban Ganga)から乗車可能。山道を力強く登ってくれる定番の移動手段。
  • カゴ(パルキ / Palki)
    • 運賃:約3,500Rs
    • 特徴:4人のポーターが担ぐ人力の椅子・駕籠。高齢者や体力に不安がある人向けで、揺れが少なく安全。
  • ヘリコプター
    • 運賃:片道約2,100Rs
    • 特徴:カトラのヘリポートから発着し、巡礼路をほぼ登り切ったヘリポートまで行く。枠がすぐ埋まるため公式サイトでの事前予約が必須。

また、降りとなる帰り道はベビーカーに乗り、ポーターに押してもらって降りてくることもできます。若干の羞恥プレイ感はありますがちょっと楽しそう。

カメラ

登山口から中にはカメラ類は持ち込めず、その辺の店の有料荷物預けに預ける必要があります。

巡礼路への携帯の持ち込みは可能ですが、本殿ではロッカーに預ける必要があります。

ヴァイシュノ・デヴィ寺院への巡礼

巡礼当日。朝五時にホテルから登山口へ向けて出発です。

途中、登録センターによってヤトラカードをゲット。

登録センターはインド人で混み合っていますが、窓口が10 個あるためどんどん人が流れていき、あまり待たずにカードを作れました。

旧道の登山口で車を降りて入場ゲートへ。

僕はカメラ持ち込み禁止について知らずカメラを持ってきていたため、一度列を離れて荷物預かり所へ。このボロさ、ちゃんと管理してくれるか不安だな。

五時半ごろ、夜明け前の静けさの中を本殿へ向けて登り始めます。

山の上に見える灯りは目的地ではなく、中間地点の「アルドクワリ寺院(Ardhkuwari Temple)」です。

まだ早朝ですが巡礼路は巡礼者で賑わい、沿道には営業している店も結構あります。ルート中、露店はかなり頻繁にあるため補給には困りません。

道中にはところどころに太鼓を叩くドーリー(奏者)がおり、リズムに合わせて踊るインド人も。少し踊った後はスンッという感じで何事もなかったかのように歩き続けるのちょっと面白い。

また、ここではすれ違う巡礼者やグループ同士で「Jai Mata Di!(母なる女神に勝利あれ!)」と声を掛け合う文化があり結構賑やかです。

外国人は全くおらず、話しかけてくるインド人も半分くらいは英語が通じません。というか外国人にヒンズー語で話しかけるコミュ力(?)はすごい。

係員や客引きもほとんど英語は通じません。客引きは言葉が通じないとすぐ諦めるので、あまりうざくないのは良い。

 山道にはところどころゴミや馬の糞が散乱しており、インド人や糞の臭いに包まれながら登る感じです。

葛折りの道をひたすら登って、二時間ほどで中間地点アルドクワリ寺院に到着しました。

この寺も中に入れるようなのですが、もらった整理券で入場可能な日付は二日後。

……いやそんなことある?寺の前の広場に座ってる人たちはここで数日待つつもりなのでしょうか。

朝食のマサラ・ドーサ。山頂価格かと思いきや、ソフトドリンクと合わせて75Rs(約130円)と思ったより安い。

沿道の売店はすべて寺院管理局の管理下にあり、ミネラルウォーターや軽食が適正な公定価格で統制されているようです。

寺の近くにはマクドナルドの看板がありましたが閉店してました(この時点ではまだマックなら肉が食べられると思っている) 。

諦めてヴァイシュノ・デヴィへ向けて登山再開。

ここから傾斜が気持ち急になり、少し疲れが溜まってきました。

途中、ヘリポートを過ぎてからは道はなだらかな下りに。寺院は一山越えた谷の中腹にある感じです。

黙々と登って九時半ごろにヴァイシュノ・デヴィ本殿のあるバワン(Bhawan)地区に到着。麓から四時間くらいで来れました。

これは寺本体ではなく門前町的な感じ。

建物や参道はインド人で大賑わいです。

ここのロッカーで、ベルトなどの革製品や携帯、リュックなど持ち込み禁止のものをロッカーに預けます(無料)。

本殿の聖域に入るまでには計3回の厳重な身体検査と金属探知があります。

携帯を預けたのでここからは写真なし。

ヴァイシュノ・デヴィ寺院へ参拝

本殿に入るための行列に並んでしばらく待ち、いよいよ本殿の洞窟内へ。

御神体は長さ42mに及ぶ細い天然洞窟の奥にあります。

並んで待っていると、司祭(プジャリ)が一人ひとりの額に朱色の印(ティラク)を付け、プラサード(神聖な食べ物)としてナッツやドライフルーツを授けてくれます。

司祭の前に三つ、後ろの壁に一つ小さな岩というか突起があります。これが御神体らしい。

洞窟の一部は流れ落ちた聖水で濡れています。

インド人は御神体の前でお供え物と礼拝をしたらすぐ外に押し出されていくのですが、僕は外国人のせいか隅っこに呼ばれて洞窟について簡単な説明をしてくれました。

洞窟を出たところには学校の水飲み場みたいな設備があり、湧き出した聖水を飲むことができます。

山頂のバイロン寺院、そして帰還

本殿への参拝を終えた後は、山頂にあるバイロン寺院へ。

ここはバワン地区からロープウェイで来ることもできますが、せっかくなので歩いて登ります(一時間弱)。

展望スポットからの眺め。霧が出てきて何も見えません。朝のうちは巡礼路から街が一望できたので、早い時間の方が良さそう。

一通り回ったので下山します。入り口近くまで戻ったところで、電気式のフットマッサージ機が並ぶ露店を発見。

15分30Rs(約50円)と格安でめちゃくちゃ気持ちいい。

14時半ごろカトラの登山口に到着。休憩や参拝含め、往復で九時間ほどかかりました。

下山した後は肉が食べたいと思って駅前のマクドナルドへ。

メニューがベジ系しかなく、これは流石におかしいとようやくカトラが完全純粋菜食であることに気づきました。

「マック・スパイシー・パニール(McSpicy Paneer)」というベジメニュー。巡礼後半はマックで肉を食べることを楽しみに歩いていたので悲しい。

人生で初めて挑んだヒンドゥー教の巡礼は、行き交う馬の群れや人波が入り乱れるカオスな山道を標高差1,000m登り続けるタフな道のりでしたが、小さな子どもから裸足のお年寄りまで一心に歩く姿に圧倒されました。

明日はジャンムー・カシミールを離れパタンコートへ移動します。